フィール公国‥‥。
保養地としても有名なその国を治めるのは、民に慕われる公王。 そして‥‥「白の至宝」とまで言われる、 美しく、優しい公女‥‥。 その国の人々は、ささやかながらも平和に暮らしていた。
だがある日、突然‥‥その平穏は、終焉を迎える。
近隣の大国、ヴァルドランドが武力侵攻を開始。 圧倒的な戦力の差に、 公王は命を落とし、騎士団はなすすべもなく潰走した。
――――――――――――――――――
そして‥‥陥落したフィラン城の王の間。 壁際に身を寄り添わせ、涙を浮かべる侍女達。 と‥‥1人の女性が侍女達を割って、
ヴァルドランドの黒鎧の騎士達の前に進み出た。 |
|
エルフィーナ 「‥‥貴方がたを率いていらっしゃった方は、どちらですか?」 |
凛とした‥‥だが美しく、静かな声。 高慢さを消し去り、 ただ高貴さと美しさだけを純粋培養したかのような雰囲気。 たおやかで慎ましく‥‥そして美しい一輪の花――‥‥。 魅入られたかの様に黒い騎士達が静まりかえる中、 1人の男が応える。
|